ルノー先生講演
ルノー先生HP用翻訳
IFU MCS Information
2009/03 – Earth Guardian
Japanese
;多種類化学物質過 敏症)-国際会議、東京
10月3日・4日 JICA(国際協力機構)-研究機関
多種類化学物質過敏 症(MCS;Multiple Chemical Sensitivity)の治療
<ヘパートックス療 法>天然キレート剤(例;グルタチオン)、ミネラル類、ビタミン類を用いる個別解毒プログラム
クラウス・デート リッヒ・ルノー医学博士
機能・環境医療研究 所(IFU)
ヴォルフハーゲン― ドイツ
www.umweltmedizin.org
1,多種類化学物質 過敏症(MCS)とは何か?
MCS患者は、一般 に広く使用される多種類の有毒化学物質に、極微量な量でも反応する。
多くの化学物質は MCS発症段階で毒物として作用する可能性が高い。
建物の汚染物質(新 たな物質;ナノ粒子)
自動車の汚染物質 (霧状粒子物質)
プラスチック素材か らの揮発物
溶剤
香水
化粧品
洗濯洗剤粉
煙(タバコ・煙突)
吸入抗原(花粉)
食物
薬
MCSは以下の状況 後で発症する可能性がある
A,急激な化学物質 曝露(多量惹起)
B,低濃度・低用量 の化学物質、薬、香料の長期に及ぶ曝露(少量惹起)
2、主流医学界での 見解は?
MCS患者―化学物 質や汚染物質を恐れる人
医師の中には、「そ のとおり。MCSという病気自体は存在する。しかしあなたは罹患していはいない。あなたの症状は精神病的なものです。」
3、機能性医療モデ ル
機能性医療において は、病気に焦点を当てる医療から、患者に焦点をあてる医療へ移行することを意味する。
ウィリアム・オス ラー氏の言葉
「より重要なのは患 者のタイプであって、病気のタイプではない。
今の病気を発症する 前の患者の健康と生活スタイルがどのようなものであったかの解明に努めなさい。」
4、ランドルフの環 境ストレスに対する特異的適応症候群(SAS)
「ストレス」という 専門用語は、1930年代において、内分泌学者ハンス・セリエが登場する前に精神分析医たちによって使用されていた。
後にセリエはこの用 語の意味を拡大して、あらゆる負担に対する身体的反応を含んだ概念を定着させる。
セリエの用語使用法 では、「ストレス」は状態を指し、「ストレッサー」とはストレスを引き起こす体内の反応を指す。
ストレスは穏やかな 炎症から本格的な体調の悪化につながるような深刻な症状までの、広い範囲の現象を網羅している。
ストレスの兆候は (化学物質による体内反応を含めて)、思考的、感情的、身体的、行動的なものとして現れる。症状としては、判断力の低下、全般的な悲観的ものの見方、過度 の不安、気持ちの落ち込み、短気、動揺、リラックスができない、疎外感・孤立感、鬱、漫然とした痛みや特定部位の痛み、下痢または便秘、吐き気、めまい、 胸の痛み、頻脈性不整脈、過食または小食、過眠症または不眠症、ひきこもり、もたつき、または無反応、リラックスの手段としてアルコールやタバコ、薬を使 用する、神経症的癖(爪を噛む、歩き回る)。
スタイルは、ラット やそのほかの動物たちを、不快または有害な刺激に曝した結果、順応には3段階があることを発見した。
1、警告期 2、抵抗期 3、疲弊期
さまざまなストレッ サーに対していつも同じストレス反応パターン(視床下部下垂体中枢(HPA)の活性化、糖質コルチコイドの分泌)が存在し、セリエはこうした反応パターン を汎適応症候群と呼んだ。
化学物質や食物、身 体的ストレスなどに一見適応しているように見える段階(第二期)後、患者は疲弊期に入る。疲弊期とは、身体における生物化学的システムの破綻を意味する。 スタイルの実験では、(寒さというストレッサーに曝された)ラットは副腎機能の低下によって死ぬ。第3段階においては副腎は完全に機能不全に陥る。
ハンス・セリエの汎 適応症候群に類似するものとして環境医学の医師セロン・ランドルフ教授は特異的適応症候群(SAS)という理論を発展させてきた。
彼は化学物質過敏症 の患者各々が、化学物質に曝露しつつも症状が現れず、長期にわたって(実際はそうでなくても!)一見適応の段階(第二段階の抵抗期)にあることを発見し た。やがて最終的な第三段階(疲弊期)において、患者は多種類化学物質過敏症のような重篤な急性あるいは慢性反応を引き起こすようになった。
5、原因;引き金と なる事象、引き金および仲介因子
(体と脳におけ る炎症)
化学物質過敏症の原 因となりうるものに関して、「機能性医療」という本の中で引き金となる事象、引き金および仲介因子について議論している。
①引き金となる事象
アメーバ(寄生虫) 感染後の関節炎は引き金となる事象と呼べる。
多種類化学物質過敏 症患者にとって、化学物質の過度の曝露(溶剤・塗料、殺虫剤、抗生物質、重金属など)は、引き金となる事象となりうる。
②引き金
寄生虫、病原体のバ クテリア・酵母・カビ、食物抗原や体内に取り込んだ毒物は、慢性大腸炎や消化不良のような炎症の継続的な引き金として作用しうる。こうした引き金は診断の 上取り除かねばならない。
多種類化学物質過敏 症患者においては、引き金は溶剤やプラスチック素材、香水、医薬品や食物、食物添加物といったように多岐にわたる。
こうした引き金は診 断の上取り除かなければならない。
③仲介因子
仲介因子は、病気の 発現をもたらす媒介因子/代謝産物であす。引き金のように、仲介因子それ自体は病気の原因とはならない。仲介因子は形状や物質が様々で、(サイトカインや プロスタノイドと言った)生化学的なものあれば、(水素イオンのように)イオン的なもの、(病気の状態の継続といった)社会的なもの、(不安のような)心 理的なもの、あるいは病の本質についての信念のような)文化的なものが考えられる。
病気の一般的な媒介 因子にはホルモン(副腎機能低下、メラトニンやプロゲステロンのバランス異常など)や活性酸素、痛みや喪失に対する恐怖、自尊心の低下、学習性無力感、適 切な健康情報がないことも含む。
あらゆる媒介因子に 共通する特筆すべき特徴としては、疾患特異性がないことがあげられる。
6、生化学的個別性
MCS患者はそれぞ れが、体や脳を攻撃する慢性的炎症につながるような引き金となる事象、引き金、媒介因子を経験した生化学的な個体である。
いったん活性化され ると、慢性的炎症が(血液脳関門;BBBと言われる)脳内のグリア細胞の免疫活性につながる。グリア細胞は胃腸の免疫細胞と連携しているので、慢性的消化 不良が、気分や行動障害、てんかん発作、偏頭痛、多動症、鬱といった形で脳内においても生じていると考えられる。
胃腸と消化システム における炎症の原因は薬、化学物質、溶剤、重金属、感染症、それに隠れた食物アレルギーが考えられる。
最近の動物実験で は、過敏性腸症候群ンの患者から採取された組織にあるマスト細胞から放出された媒介因子はラットの内臓痛覚ニューロン(痛みを引き起こすニューロン)の炎 症を助長させるということがわかった。つまり、炎症性の媒介因子は神経システムに影響を及ぼすということである。また、視床下部下垂体中枢(HPA)と胃 腸免疫システムには関連性がある。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)と糖質コルチコイドの量が慢性的に高いレベルにある慢性的ストレスは、炎症促進作用の あるサイトカインの一種、インターロイキン6(IL6)とインターロイキン8(IL8)を放出させる原因となる。
化学物質は体と脳双 方における炎症過程を上方制御する作用があるため、MCS患者に対しては炎症元となる体と脳双方を分析する必要がある。
こうした知見にもと づき、MCS患者診断においては、患者の体で慢性的炎症過程―毒物や生物学的引き金や媒介因子によってもたらされる持続的炎症―にまで移行しているかを診 断調査しなければならない。
7、MCS患者用に 推奨される診断プログラム
7.1 代謝と栄養 状態(有機酸分析データ)、毒物など
生化学研究において 過去数年で最も盛んな分野は、生化学的疾病の媒介因子の特定と個別化である。毒物学テストを含む一般的な医療分析に加えて、新たな尿テスト―有機酸分析 (オルガニクス分析データ)- がMCS患者にとっての引き金や媒介因子を突き止めるのに役立つ。
独自に編み出した包 括的オルガニクステスト(特許出願中)は体の細胞代謝の過程と代謝機能の効率性に焦点をあてる。栄養学的治療が可能な解毒の際の代謝障害や問題、腸内毒素 症、酸化ストレスを特定することで、患者個人に合わせた介入治療が可能となる。
焦点を絞った治療に よって、患者の反応を最大限に高めることで、より効果的な結果が得られるようになる。
MCS患者は、エネ ルギー生産欠乏(ATP;アデノシン三リン酸)をもたらすミトコンドリア障害の兆候を示すことが多い。体は解毒のためにエネルギーの8割を必要とするた め、ミトコンドリア障害は解毒機能の低下と直接的に結び付くことになる。グルタチオンやアルファリポ酸、コエンザイムQ10(ユビキノン)といった物質 は、ミトコンドリアの働きを助けることで、エネルギーレベルを上げて解毒能力を高める。
7.2 重金属毒 性
元素には細胞に蓄積 し毒性効果をもたらすものもある。重金属毒性は環境が健康に及ぼす深刻な懸念である。鉛やカドミウム、水銀、ヒ素などの毒性負荷は、とりわけ子供の脳や神 経システムに深刻なダメージを与える可能性がある。毒性成分は様々なメカニズムによって多くの悪影響をもたらす。
そのメカニズムの一 つ、不可逆的酵素阻害は貧血症状として現れるが、これは鉛がヘモグロビン合成過程の酵素と結びつくことで生じる。水銀は酵素中毒症を発症させる。鉛や水銀 はグルタチオンを減少させ、ビタミンB12(メチルB12)欠乏症を起こす。
ヒ素の発がん作用は DNA修復阻害の結果と考えられる。染色体が損傷する変異原性は、カドミウムや鉛、ニッケルの活性酸素発生作用に関連している。
栄養成分や毒物成分 は血液や尿、毛髪から測定することが可能である。
毛髪は血液と比べて 数百倍も重金属を蓄積するため、人間や動物の慢性的重金属曝露を検査する際の有効性について定評がある。なんらかの重金属が毛髪に蓄積されている場合に は、曝露原因の調査が妥当である。毛髪の重金属レベルが高濃度であることは、他の兆候や症状が出る以前に慢性的な曝露状態にあったことを示していると推測 できる。
もう一つ別の診断方 法としてポルフィリン分析がある。(訳注;ポルフィリンとは、有機化合物の一つで生命の色素ともよばれ、酸素運搬や光合成など生体内の様々な機能にかかわ る。)ポルフィリン分析結果は患者の重金属中毒や有機化学物質の曝露の度合いを特定するのに役立つ。化学物質曝露や重金属負荷は身体に影響を及ぼし、代謝 や細胞機能の悪化を招く。尿中のポルフィリン測定はまたMCS患者の治療経過観察にも役立つ。
7.3.フタレート とパラベン分析
フタレートとパラベ ン分析は、日用品やプラスチック食べ物容器といった類の使用による日頃の毒物曝露を特定するのに利用することができる。環境由来の毒物は患者をもとの健康 な状態に戻す「初めの一歩」として測定評価をするべきである。
*なぜフタレートと パラベン蓄積レベルを測定評価するのか?
フタレートとパラベ ンの曝露は思っている以上に頻度が高い。フタレートとパラベンは通常ゼノエストロゲンとして分類され、これは体内でとりわけエストロゲンレセプターと結合 する環境ホルモンとして作用する体内には本来存在しない化合物である。
環境ホルモンに関連 して発症する疾病の例として;
・子宮内膜症
・不妊
・乳癌
・卵巣癌
・前立腺癌
・精巣癌
・精子減少
日常的な曝露と関連 するその他の健康被害の例として;
・肝毒症
・アレルギーや喘息 などの免疫疾患
・生殖毒性
・早熟
*フタレートとパラ ベンの検出源
フタレートは「可塑 剤」とも呼ばれ日常使用する多くのものから検出される。
・子供向け玩具
・化粧品
・清掃用品
・芳香剤
・香水
・家具
・塩化ビニルの床
・プラスチック製食 べ物容器
・医療製品
フタル酸ジエチルヘ キシル(DEHP)はポリ塩化ビニルの一般的な添加物である。この添加物は、ポリ塩化ビニルをデザイン性のある形になるよう柔らかく曲げやすくする働きを する。ポリ塩化ビニル製品はプラスチックコード「3」に分類される。香水や芳香剤において、フタレートは「香料」と表記されていることが多い。
7.4.隠れた食物 アレルギー
IgG4抗体は様々 な健康障害をもたらす非アレルギー性、すなわち血管運動性あるいは遅延型食物反応と関連している。こうした反応は免疫反応を仲介する食物不耐性の一般的な ケースとして考えられている。 実際、食物に対してはIgG4反応のほうが即時型反応をもたらすIgE反応よりも一般的である。IgG4は抗体の侵入を防 ぎ、致命的ともなりかねないIgE反応を個体が起こさないよう守っている。こうした反応を認識するのは、反応そのものが問題となる食物を摂取してから数時 間後ときには数日たって生じるため、IgE反応を認識するよりも難しい。場合によっては、食物に対する反応が問題となる食事摂取から数日たって起こるた め、食物と患者の症状を関連付けることができないこともある。こうした「隠れた」食物アレルギーは、特定の食物に反応してIgG4抗体の血中濃度が上昇す ることによって生じる。特許出願中のIgG4分析評価はテスト結果の誤検知を減らしより患者に即した治療へとつながる。
7.5.便および消 化分析評価
新たな便試験では、 かつては腸内環境では測定不可能とされた嫌気性菌を含む微生物群を特定するためにDNA分析評価を用いる。DNA分析評価は明確かつ正確で、検体移動の問 題を避け、結果を明確な数字で表すことができ、従来の実験室手法よりも精密なものである。
便分析評価では1グ ラムあたり少なくとも5つの細胞を検知することができ、これは寄生虫検査を目的とする顕微鏡法と比べて精度が5000倍もあがる。
*なぜ便分析評価を 用いるのか?
胃腸機能は健康全般 において欠かすことができない。腸管系には有益・無作用・有害といった様々な種類の細菌が相当な数存在している。腸内での有益な微生物群のバランスをとる ことが健全な消化、効果的な栄養摂取、それに老廃物や病原菌を体外に排出するにあたっての鍵となる。消化不良や吸収不良は、免疫不全や栄養失調、精神障害 や情緒障害、それに自己免疫疾患につながりかねない。
8、治療法;DNA コンセプト
これまで治療手法の 概要を述べてきたが、私はこれを次の3つの要素からなることからDNAコンセプトと呼んでいる。
D;Detoxification= 解毒
N;Nutritional Therapy=栄養療法
A;Anti- Stress-Management=抗ストレス管理
―清浄な環境+解毒
―分子矯正サプリメ ント(ビタミン類、ミネラル類)
―サウナやマッサー ジ、スポーツなどの身体療法
―個人指導;環境医 学・機能性医学についての個人教育
目的として;
1、解毒能力の向上
2、炎症抑制(体や 脳で起きる炎症を静める)
3、身体的・精神的 安定
8.1.ヘパートッ クス肝臓解毒療法
ヘパートックス療法 と名付けたこの解毒療法では、ビタミン類やミネラル類、それにグルタチオンやアルファリポ酸のようなキレート物質を含む単体硫の点滴注入(静脈内療法)を 施す。我々の治療ではEDTAやDMPSといった合成キレート剤は使用しない。
先述いた医療評価分 析をもとに、個人別プログラムを作成し、栄養に依存している代謝機能の正常化を目指す。
次に列挙するサプリ メントは我々の解毒療法においては重要なものとなる。
グルタチオン
アルファリポ酸
コエンザイム Q10(ユビキノンン)
カルニチン
ビタミンB複合剤 (ナイアシン、ピリドキサール5リン酸エステル、メチルB12)
ビタミンD3
ブロッコリー抽出物
抗酸化物質(高濃度 ビタミンC,ビタミンE,ポリフェノール)
ミネラルや微量成 分;マグネシウム、亜鉛、セレニウム
グリシン
9、環境配慮型建築 と環境医学
MCS患者は安全な 環境で治療を施さねばならない。
今から20年前の 1989年のこと、私は、ドイツ中部にある北ヘッシアに位置する小さな温泉村に環境に配慮した環境病の研究所を建設することを決意した。壁土として使用し た石灰モルタルや多孔質の鉱物塗料は、有毒物質をろ過、結合、中和することができる。断熱性だけでなく、湿気が少なく、短期間で乾くこともこうした建設素 材を選ぶ際には重要な要素となってくる。我々は建設資材会社や建設会社に運ばれてくる建材が放射能や毒性気化物質や芳香成分を含まないもの(低揮発製品) であることの証明書を提示するよう依頼した。木材部品の手入れについては、テルペンを含まない天然ラッカ―や敏感な患者のために特別に開発されたワックス を使用した。
電磁波を下げるため に被膜ケーブルを用いてきた。プラグ使用の電化製品によって生じる振動波を避けるために、すべての電気回路は回路スイッチを装備し、電化製品の電源が切れ ているときは電気回線の全ての電流も切れるようにした。電気回路配線は星型に設置した。
ヴォルフハーゲンで の新企画―グリム兄弟の故郷の歴史的街において
現在、我々はドイツ のヴォルフハーゲンの都市と協力して新たな環境企画であるエコホテルヴォルフハーゲン城を構想中である。ヴォルフハーゲンは半分梁を目ぐらした家々が立ち 並ぶおとぎの国グリム兄弟のいた歴史ある街だ。グリム兄弟の一人ルートビッヒ・エミール・グリムはかつてヴォルフハーゲンに住んでいた。彼は自分の兄弟で ありヤコブとヴィルヘルム・グリムが書いた有名なおとぎ話のコレクションのための絵をたくさん描いた。街は1231年、チューリンゲンのコンラード伯爵よ り独立して設立された。エーデル渓谷や歴史的建造物が豊かなかつてのヘッセン選帝侯領土の首都、カッセルの西に程近く、中部ドイツ高原地方でもっとも美し い場所の一つである。
MCS患者の数は増 加の一途をたどっている。こうした社会的孤立をますます深めていく人たちにとっては、静養したり休暇を楽しんだり、医学的治療を受けるための安全な場所が 不可欠である。
だからこそ環境配慮 型建築や応用環境医学の知識に基づく家や病院、ホテルの建設が緊急課題となっている。我々は光栄にも地元自治体の支援、とりわけ我々の先輩で、「環境テク ノロジーが環境医学と手を結ぶべき」とのモットーを掲げ我々の企画を大いに支援してくれるラインハルト・シャッケ氏の支援を受けている。シャッケ氏はまた 2015年までに100パーセント再生可能なエネルギーの生産を目指している。昨年、ヴォルフハーゲンは「親エネルギータウン」賞をドイツ連邦政府より授 与されている。
執筆本と住所
1、ルノー、クラウ ス・デートリッヒ;「もし化学物質が神経システムを攻撃したらー
解毒によっていかに 能や神経を守ることができるか」ミュンヘン、ドイツ、第2版、2009年4月
2、レオ・ガーラン ト、ヘレン・ラファティ;胃腸機能障害:慢性疾患との関連性、機能性医学専門書;機能性医学研究所、2008年
診察および療養セン ター
機能環境医学研究所 (IFU)
医局長:クラウス・ デートリッッヒ・ルノー
www.umweltmedizin.org
www.ifu.org
ヴォルフハーゲン― 観光案内所
www.wolfhagen.de
touristinfo@wolfhagen.de
患者団体
CSN-化学物質過 敏症ネットワーク
シルビア・K・ミュ ラー
www.csn-deutschland.de
csn@allergic.de
(翻訳;佐山摩麗 子)
講演3「天然キレー ト剤(グルタチオン)、ミネラル、ビタミンによる解毒」
ドイツ・環境病研究 所医師 クラウス デートリッヒ ルノー氏
本日は、私がMCS(多種化学物質過敏症)患者を治療し始めてから学んだ様々なこ と、特に実践的な考え方についてお話しさせていただきたい。
1.MCSとは何か
今日は、いろいろな毒性化学物質について話がされているが、いったいいくつの化学 物質が登録されているのだろう。化学物質とは必ずしも限らないが、新しい物質が先月以降、5000万も登録された。日々、3万もの新しい物質が登録されて いる。MCS患者について原因化学物質を特定するのは非常にお金がかかるし(特定の目的がある場合以外は)それをやることに意味はない。
MCS患者は、一般に広く使用される多種類の化学物質に、極微量でも反応する。
一般に使用されている化学物質とは、たとえば、化粧品、洗濯洗剤、建物内の化学物 質、車内の(霧状になる)化学物質、プラスチックからの揮発ガス、溶剤、香水(これも非常に大きな問題だ。ドイツでは「化学物質過敏症ネットワーク」(www.csn-deutschland.de)という患者団体か ら、香水に関する論文が出されている。たばこだけではなく、香水が非常に大きな問題になっている。香水もやはり有害物質だ)、吸入抗原、食物(添加物、着 色料、保存料)がある。
多くの人々は、これらの化学物質に寛容性(耐性)を持っている。それと同時に、多 くの人々が、寛容性を失っている。
2.主流医学の見解
主流医学のMCS患者に対する見解として「彼らは化学物質や汚染をこわがっている のだ」というものがある。「その通り、MCSという病気自体は存在する。しかしあなたは罹患してはいない。あなたの症状は気のせいです」と医師は言う。
3.機能性医学モデ ル
ウィリアム・オスラー卿(Sir William Osler)は「大事なことは、 患者が持っている病気を知ることではなく、病気を持っている患者について知ることだ」と言っている。つまり、患者の健康、人生を理解しようとすることであ り、この病気を発症する前にどういう生活をしていたか、どういう健康状態だったかを知るべきというのだ。
機能性医学モデルとは、病気に焦点を当てる医療から、患者に焦点を当てる医療へ移 行しようとすることを意味する。
「氷山の一角」という言葉がある。たとえば「頭痛」という症状が出たとき、頭の中 に腫瘍があるかもしれないし、ホルモンの問題かもしれない。医師は鎮痛剤やホルモン剤を処方したり、あるいはホメオパシー治療を導入することもある。しか し、それらは氷山の一角を見て治療しているだけだ。これに対して、機能性医学は氷山の全体、栄養や環境の要素にも対処しようというものだ。
私が患者に対して行っている診断のための検査のプログラムは、以下の通りだ。
①血球数測定:ルーティーンでやるだけではなく、ホモシステイン、高感度CRP、イン ターロイキン6(炎症のマーカー)、ビタミンD3も測定する。
②有害物質(毛髪、血液、尿)
③有機酸:オーガニクス総合分析。新しい検査法であり、後で詳述する。
④ポルフィリン・テスト:重金属毒の深刻度を測定。
⑤フタル酸塩:内分泌かく乱物質で、これらも尿から検出されることがある。信じられな いかもしれないが、ドイツで測定された小児の実に100%から尿中から内分泌かく乱物質が検出されたと8月に発表された。
⑥アレルギー:特に食物アレルギーの検査も行う。MCSの人たちは化学物質に過度に曝 露されていることによって典型的なアレルギー症状も発症する。日々の食べ物に対しても、そうだ。
⑦検便:遺伝子解析。
⑧MRT:核磁気共鳴画像。
4.特異的順応症候 群
内分泌学者ハンス・セリエは、ラットなどの動物実験の結果、ストレスへの反応には①警告期②順応期③疲労期の3段階がある ことを発見した。様々なストレッサーに対していつも同じストレスの反応パターン(視床下部下垂体中枢(HPA)の活性化、糖質コルチコイドの分泌)が存在 し、セリエはこうした反応パターンを「汎適応症候群(GAS)」と呼んだ。患者は、化学物質や食物、身体的ストレスなどに一見順応しているように見える段 階の後、疲労期に入る。疲労期とは、身体における生物化学的システムが破綻している状態を意味する。
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セリエの汎適応症候群との比較で、環境医学者セロン・ランドルフ教授(内科医、精 神科医)は「特異的適応症候群(SAS)」という概念を構築した。ランドルフ教授は、CS患者個人個人について、化学物質に曝露しつつも症状が現れない長 期のはっきりとした(真のものではない)順応期があることを発見した。
ステージ1の警告期は、ストレス因子となるアレルゲン等を摂取した時に、一時的に 気分が落ち込むが、それは短期間で終わる。
ストレス因子を継続的に摂取していくと、ステージ2の順応期に入る。この期間のほ とんどは、気分は高揚していて、自覚症状はない。この期間は数カ月から数年にわたる。
その後もさらにストレス因子の摂取が続くと、移行期を経てステージ3の疲労期に入 る。疲労期において、患者はMCSのような重篤な急性あるいは慢性反応を引き起こすようになる。ここで初めて病気になったという自覚症状が出てくる。
5.MCSの原因
MCSの原因として、①突発的先行事件、②トリガー(発症のきっかけ)、③メディエータ(憎悪因 子、仲介因子)の三つがある。
(1)突発的先行事 件
たとえば、何らかの寄生虫などで腸管に感染が起こり、そのために反応性関節炎が起 こるのは、突発的先行事件の一例である。疾患はここから始まる。
様々な化学物質への曝露(多くの人は大丈夫であっても)が突発的先行事件になる場 合もある。たとえば、部屋に新しい塗料を塗った時や、新しい抗生物質を処方された場合、または殺虫剤、重金属などである。
(2)トリガー
発症のトリガー(引き金)としては、寄生虫、バクテリア、酵母、カビ、食物抗原、 毒物の摂取など様々なものがある。これらが大腸炎、消化機能障害、関節炎などの慢性疾患を引き起こす継続的なトリガーになりうる。主流医学においては、専 らこれらについて着目する。これらの引き金は、診断のうえ取り除かなければならない。
MCS患者におけるトリガーは、溶剤、プラスチック、香水、医薬品など、さまざま な化学物質である。これらの引き金も、診断のうえ取り除かなければならない。
(3)メディエータ
メディエータは、病気の症状発現に寄与する媒介因子や代謝産物である。トリガーと 同様、メディエータもそれ自体が病気の原因となるわけではない。メディエータは多種多様で、生化学物質(サイトカイン、プロスタノイド等)、イオン(水素 イオン等)、社会的因子(病気のままでいさせる社会的要因など)、心理学的因子(恐怖など)、あるいは、文
化的因子(病気の本質に関する考えなど)がある。
病気に共通のメディエータとしてはホルモン(副腎機能低下症、メラトニンと黄体ホ ルモンバランスの乱れなど)、フリーラジカル、痛みや喪失への恐怖、低い自己評価、今まで助けられなかったことから来る無力感、健康に関する適切な情報の 欠如などがある。
ここで注目すべきなのは、すべてのメディエータに疾病特異性がないことである。 MCSの患者は、それぞれ個別の先行誘発イベント、トリガー、メディエータをもった生化学的な個体であり、脳と体に火をつける慢性的な炎症をかかえてい る。いったん慢性的な炎症が活性化されると、脳のグリア細胞、いわゆる血液脳関門(BBB)の免疫活性化がもたらされることがある。グリア細胞は腸内の免 疫細胞と関連しているため、消化器内でおこった慢性的機能障害が脳においても起こるとみることができる(憂鬱な気分、行動異常、てんかん、偏頭痛、多動性 障害、うつなど)。
(4)腸の障害が原 因に
腸と脳はつながっている。
腸の粘膜表面には外界に対するバリア機能がある。しかし、粘膜表面が寄生虫や化学 物質、薬品などによって損傷されたり、アレルギー物質によって侵されると、血管や神経束によって腸は脳へつながっているので、ストレスがかかって便秘や下 痢を引き起こす。重要なのは、神経束で腸と大脳がつながっているということだ。こうした神経束の90%は上下に走っており、解剖的に見ても腸と大脳はつな がっている。そして、すべての神経伝達物質は、この腸管の部分で見つけられる。たとえば、睡眠あるいは覚醒状態のコントロールに非常に重要で食欲を発生さ せるセロトニンなども90%は腸管で見つかる。すなわち、化学的にも腸と脳がつながっていることを示している。実は胃腸科の医師も、腸が原因でこのような 疾患が起きることについて理解していない。
分子が大きなタンパク質や毒素、バクテリアは、通常であれば腸の表面のバリアに よって体内へ侵入できずに腸管の中を通過していく。ビタミン、ミネラルなどの栄養素はこのバリアを通過できるので体内へ吸収される。ところが腸壁が損傷さ れると、バリアの中に開いたところができ、毒素が体内に取り込まれてしまい、そこから血管の中へ毒物が侵入する。この場合、逆に小さな粒子は腸壁の表面に 留まってうまく吸収されず、栄養失調、つまりビタミン欠乏症などが起きる恐れがある。この場合も化学物質による突発的先行事件になり、アレルギーがトリ ガーされ、発症するということになる。
6.生化学的個人差
喫煙していても100歳を超えて元気で歩き回っている人がいる。一方で、喫煙でが んになって死ぬ人もいる。なぜ一部の人は長生きして、一部の人はがんなどで亡くなり、あるいはMCSにかかるのか。
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この場合、遺伝子が大きな問題だと言われる。しかし、遺伝子だけでは病気は発症し ない。遺伝子のほかに環境が相互作用することによって初めて「あなた」という存在があるのだ。つまり遺伝子の表現型が問題になるのだ。だから、がんの本当 の研究は遺伝子だけでなく環境も考えなければならない。3分の1ぐらいは遺伝子、3分の2は環境によってトリガーがかかっていると考えなければならないと 思う。
もちろん皆さんは、両親から遺伝した一種のプログラムを持っている。しかし、環境 の中でそのプログラムが何をするかというのが問題なのだ。アレルゲンである花粉や食物に対して、また、毎日3万種の新たな物質が入ってくる環境に対して、 どう反応するかが問題だ。だから、同じ遺伝子であっても、人によって発症したりしなかったり、MCSを発症したりCFS(慢性疲労症候群)を発症したりす る。
7.医学的分析
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体内の解毒システムの経路は、主に二つある。まずフェーズ1では、チトクローム P450酵素による水酸化反応が起こる。異物がこの段階で攻撃され、それが活性化した中間生成物になる。ここでは多くの抗酸化物質が必要になる。つまり、 家でごみが出ると、ごみをポリ袋か何かに入れるが、それがすなわちフェーズ1だ。このポリ袋を運ぶのがフェーズ2だ。フェーズ2では包合反応が起こり、化 学物質が水溶性化合物に変換され、腎臓を通して体外に排出される。
私たちが肝機能の検査を行い、フェーズ2の抱合反応があまり良くない場合、この患 者は化学物質に曝露された時に十分なスピードで解毒できないことが分かる。
私たちが具体的に測定しているのは、以下のような様々な代謝産物、つまり有機酸 だ。
①メチルマロン酸=ビタミンB12マーカー
②ホルムイミノグルタミン酸塩=葉酸マーカー
③パラヒドロキシフェニル乳酸塩=酸化促進剤/発がん物質
④高濃度の硫酸塩=解毒作用の昂進、又は酸化ストレス
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私たちの体内では、ホルモンなどによって物質を変換していく。物質A、たとえばア ミノ酸が体内に入り、ビタミンやミネラルなどの栄養素を使って物質Bに変え、さらに栄養素を使ってCに変え、さらに最終物のDになる。
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しかし、たとえば、酵素、ミネラル、またはビタミンの欠乏によって、この経路が途 中で阻害されると、体は必要なD、たとえばタンパクを作ることができず、物質Bが尿中に出てしまう。このBのような中間代謝産物を私たちは測定する。
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ある患者の尿検査で、図の通りのものが検出された。「栄養素マーカー」欄に記載さ れた全部が中間代謝産物であり、これら全部が検出されないことが望ましいのだ。この患者の場合はエネルギー産生マーカーなどに問題があり、CoQ10や葉 酸が必要だ。
生化学研究において過去数年で最も盛んな分野は、生化学的疾病の媒介因 子の特定と個別化である。図で紹介した、独自に編み出したオーガニクス総合分析(特許出願中)によって、患者個人に合わせた、より効果的な治療が可能にな る。
MCS患者は、エネルギー生産欠乏(ATP:アデノシン三リン酸)をもたらすミト コンドリア障害の兆候を示すことが多い。体は解毒のためにエネルギーの8割を必要とするため、ミトコンドリア障害は解毒機能の低下と直接的に結び付く。グ ルタチオンやαリポ酸、CoQ10 といった物質は、ミトコンドリアの働きを助けることで解毒能力を高める。
ビタミンB12は、神経細胞の増殖、成熟、および新生のために重要な栄養素だ。し かし、鉛や水銀のような重金属はメチルビタミンB12の生成を阻害する。
元素の中には、細胞に蓄積し毒性効果をもたらすものもある。毒性重金属は健康への 深刻な懸念となっている。鉛やカドミウム、水銀、ヒ素などは、とりわけ子供の脳や神経システムに深刻なダメージを与える恐れがある。毒物は様々なメカニズ ムによって多くの悪影響を引き起こす。そのメカニズムの一つとして、鉛や水銀はグルタチオンを減少させ、メチルビタミンB12欠乏症を起こす。
8.治療法:DNA 概念(ルノー提唱)
私は治療法をまとめ「DNA概念(コンセプト)」と名づけた。DNAとは、
①Dwtoxification 解毒療法
②Nutritional-Therapie 栄養療法
③Anti-Stress-Management ストレス対処 マネジメント
の頭文字をつなげた略語だ。
治療の柱は、以下の通り。
①クリーンな環境と解毒
②正常分子(Orthmolecular)サプリメント(ビタミン、ミネラル、微量元素、アミノ酸)
③ストレス対処プログラム(サウナを利用した理学療法、マッサージ、スポーツ等)
④個別指導(環境医学・機能医学の基礎を個人指導する)
生化学的に個人的に違うので、個人に合わせて指導しなければならない。しかし、こ こは非常に時間がかかるところだ。
治療の目標は、以下の通り。
①解毒能力の向上
②炎症の沈静化(体と脳内の火を鎮める)
③身体面及びメンタル面の安定
私はコソボの鉛中毒の子どもたちを治療した。非常に悲劇的なことだが、今、ヨー ロッパで200人が鉛などの有毒金属が貯蔵されているすぐ隣に住んでいる。多くの子どもたちが亡くなっている。私たちは、グルタチオンの静脈注射によって 解毒治療を行い、4週間後には、尿中の中間代謝産物がかなり減った。これを真っ白にすることを目指して、その後も数ヶ月治療した。
また、ストレスはたいへん大きな問題である。こストレスは以下のことから生じる。
①「闘うか逃るか」思考=恐怖、不安、悩みを生む
②うつ感情、敗北感、無力感
③痛み症候群
④感染症、炎症
⑤低血糖症(低血糖状態)
⑥不十分・質の悪い睡眠
⑦光周期が乱される
⑧有害物質への曝露
MCSの患者も継続的にストレスに曝されている。どこへ行っていいかわからない、 会議に参加しても香水でだめになって途中で出るなど、とにかくいつもストレスに曝されている。抗ストレスプログラムも非常に重要だ。
(1)グルタチオン やαリポ酸等を使用した解毒治療
グルタチオンやαリポ酸は、体内で生成される天然キレートである。
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αリポ酸、あるいはグルタチオンを注射などで注入すると、図のように金属を取り込む。 金属そのものがなくなるのではなくて、キレート剤の中に取り込まれるのだ。
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丸印の硫黄の部分が活性部位になって、ここで重金属を解毒する。αリポ酸は肝臓で生成さ れる。
グルタチオンも同様に硫黄の部分を持っている強力な抗酸化物質(トリペプチド)で ある。システイン、グリシン、グルタミンから作られる。体が十分に栄養を吸収できないと、十分にアミノ酸が得られず、グルタミンが十分に作られないので、 解毒能力が下がって体調が悪化する。
グルタチオンは過酸化物を還元する。グルタチオンは脳における最も重要な抗酸化物 質の一つで、フリーラジカルのダメージから脳を守る。
私たちは、以下の物質を静脈注射で投与するといった治療を日々行っている。
①他の薬剤が混ざらない還元型グルタチオン600mg(i.v.)週1回を4度
②大量のビタミンC投与(アスコルビン酸ナトリウム7.5g)+マグネシウムアスパ ルテート/カルシウムEAP/亜鉛/交互に投与
③セレニウム-ナトリウム100μg、ビタミンB群(葉酸を含む)
④αリポ酸300~600mg
⑤Lカルニチン1000mg
コンパクト解毒プログラムという1週間の解毒プログラムもある。また、経口剤を 6~10週間服用して結果を 見ることもある。
経口薬投与の場合は、以下について1日1回投与する。服用量は検査結果に応じて変 更する。
①αリポ酸100~300mg
②スルフォラファン15~30mg<ブロッコリー抽出物>
③セレン<セレノメチオニン>、亜鉛、モリブデンを含むマルチミネラル
④マルチビタミン(メチルコバラミンとP-5-Pを含む複合ビタミン)
⑤ビタミンC1g(吸収がゆっくりなタイプ)
⑥ビタミンE(ガンマ-トコフェロール300mg含む)
⑦アミノ酸(グリシン、アルギニンなど含む)
(2)心肺運動連続肺活量測定
解毒治療が奏功しているかについての評価法として、尿検査だけではなく、心肺運動 をさせて肺活量を測定する。
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心拍数は、運動をすると上がっていく(上のライン)。体内酸素濃度も測る。血中に 毒素があると酸素の有効利用がブロックされ、酸素有効利用率が上がらない(下のライン)。
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治療後4週間で、グラフのような正常値になった。4週間で酸素の使用量が30%も 増加したのは非常に劇的だ。通常では、スポーツマンなどでもこのくらい改善するのに1年くらいかかる。
結論としては、グルタチオン、ビタミンB12(メチルB12)、ビタミンD3αリポ酸は、皆さんに とって重要なので、定期的に摂っていただく。また、メラトニンは大脳にとっても非常に良い。
9.環境建築物
MCSの患者は、安全な環境で治療を受けさせることが必要だ。通常の病院だと、消 毒などのために、ありとあらゆる化学物質が噴霧されている。
(1)バードエムス タール
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1989年、私は、ドイツ中部の小さな温泉村であるバードエムスタール(Bad Emstal)に、ドイツで初めての環境施設を建設した。壁土として使用した石灰モルタルや多孔質の鉱物塗料は、有毒物質をろ過、結合、中和することがで きる。断熱性だけでなく、湿気が少なく、短期間で乾くことも、こうした建設素材を選ぶ際には重要な要素となってくる。私たちは建設資材会社や建設会社に運 ばれてくる建材が放射能や有害気化物質や芳香成分を含まないもの(低揮発製品)であることの証明書を提示するよう依頼した。木材部品の手入れについては、 テルペンを含まない天然ラッカ―や敏感な患者のために特別に開発されたワックスを使用した。
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これは、患者が使う台所。添加物のない食品を使う。
部屋の構造も特殊なものになっている。煉瓦を使った天井だ。現在造るとお金がかか る、伝統的なやり方の建築である。できるだけ地球の磁場を妨害しないように、鋼鉄をできるだけ避けている。
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回路スイッチ(ブレーカー)を入れるスイッチングボックス。金属を挟むことで電磁 場を減衰させられる。すべての電気回路には回路スイッチを装備し、回路スイッチを切ることで、個別の電化製品の電磁場だけでなく、部屋中の電気配線からの 電磁場も遮断できるようにした。
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電気配線には電磁場を減衰させるために金属メッシュで被覆したケーブルを用いた。
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部屋の中の金属管は外部からの電磁波の影響を受けやすい。その影響を減らすために 放射状(星形)に配管している。
(2)ヴォルフハー ゲン
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現在、私たちは、ヴォルフハーゲン市と協力して新たな環境企画であるエコホテル ヴォルフハーゲン城を構想中である。ヴォルフハーゲンは歴史ある街で、グリム兄弟の一人ルードヴィッヒ・エミール・グリムは、かつてヴォルフハーゲンに住 んでいた。エーデル渓谷や歴史的建造物が豊かなかつてのヘッセン選帝侯領土の首都、カッセルの西に程近く、中部ドイツ高原地方でもっとも美しい場所の一つ である。
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このお城をホテルに改装しようとしているのだ。
10.最後に
MCS患者は、社会の中である種の指標になっていると思う。ただ、子どもたちのこ とも忘れないでほしい。グローバル化した世界の中で環境汚染が深刻化し、子どもの症例も出てきている。子どもの場合、免疫系及び神経系システムが非常にナ イーブなので、子どもたちには注意を払わなければならない。つまり、皆さんの将来のために投資をしていくことが大事だと思う。先進国も、コソボのような発 展途上国についても、考慮が必要だ。
機能性医学と環境医学こそ、21世紀の医学である。
(質疑応答より)
参加者 グルタチオンの投与について、経口と静脈注射とで効果はどの程度違うか。
ルノー 経口では腸管の中でかなり破壊され、20~30%が腸管から吸収されて血 管に入る。しかも、解毒が必要な人の場合はしばしば腸壁が損傷しており、その場合、吸収率はさらに下がる。静脈注射だと、注入された全量が血管に入る。
参加者 ストレス対処プログラムと個別指導について、もう少し教えてほしい。
ルノー ストレス対処プログラムは、赤外線サウナやマッサージなどの理学療法や、 森の中へ行って自然に戻ること。あまり哲学的な話はしたくないが、環境因子に体がどう反応するか、自分の体を自分で聞く、体の反応を聞くということだ。ミ ラー先生が後ほど説明してくださるが、マスキング効果というものがあって、その影響を解かなければならない。
個別指導は、皆さんそれぞれが生化学的な個体なので、たとえば、あなたが必要なビ タミンCは300gなのか400gなのか、検査結果など に基づいて患者さんと議論し、アドバイスをすることなどだ。
参加者 ルノー先生が治療をしている子どもたちの中で、いわゆる自閉症だが化学物 質が関与していると思われる人がどのくらいいて、どのくらいの治療効果が得られているのか。
ルノー ちょっと難しいご質問だ。確かにADHDや自閉症の子もいるし、自閉症の 子どもの90%は腸に問題があると言って良いと思う。特に金属などが解毒できないというケースが多い。フェーズ2の解毒まで行くのに十分なグルタチオンが ないことなどにより、体内にある様々な金属をうまく代謝できない。自閉症の子どもでも1~3年で正常になることもある。自閉症は確かに遺伝子的な要素もあ るが、遺伝子というのは非常にダイナミックで、サプリメントやミネラル食品、良い空気でもってサポートしてあげれば、遺伝子の良い形質が発現する場合もあ ると思う。
参加者 自閉症について化学物質や金属の問題が大きいと考えて治療に当たっている 医師がドイツには多いのか。
ルノー いいえ。これに関しては世界共通だ。世界の主流医学は、そういうことは認 めない。
参加者 ドイツは特にバウビオロギー(建築生態学)が進んでいると思うが、バウビ オロギーの考え方にあるように、患者にとっても健常者にとっても、その土地の周辺で調達できる建築資材を使って家を建てることは重要なのか。
ルノー まったくその通りだと思う。その地域でとれる材料を使うことは非常に良 い。世界中どこでも天然の良い資材はあると思う。単に患者さんだけではなく次世代の子どもたちのためにも、どうやって家を建ててどんな材質を使うのかはよ く考えるべき。確かに現代のテクノロジーにも素晴らしいものはあり、私もよく使うが、やはり人工的な建材には懸念もある。私の推奨する企業は、製造工程の 終わりの段階で除染をする。除染室が設けられ、そこで家具などを化学物質を使わずに洗浄する。CSの方は本に触れられないことがあるので、本も木炭などで 浄化している。このような企業だったらおすすめできる。このような洗浄の段階を製造工場に設けることはお金がかかるが、考える価値はある。
参加者 MCS患者はドイツでも多いか。
ルノー ドイツにも非常にたくさんいる。先日大きなテレビ局でMCSに関する番組 が放映され、私も招待された。番組を通して、より多くの人たちがMCSを認識するようになった。
参加者 化学物質曝露で腸内などの臓器が損傷された場合、解毒により再生できるの か。
ルノー 臓器はもちろん再生する。少し時間はかかるかもしれないが、必ずうまくい くので、絶望する必要はない。
【パネルディスカッションから】
コーディネーター ルノー先生の診療所等に、公的支援はあるか?
ルノー いいえ、すべて私的な支援でまかなってきた。ただ、時代は変わりつつあ る。私が治療施設をヴォルフハーゲンへ移転した時に、市長がサポートをしてくれて「1ユーロ」をいただいた。